1. はじめに
ビールは世界中で愛されている最もポピュラーなアルコール飲料のひとつです。
しかし「ビール」とひとくちに言っても、実はその種類は驚くほど多彩。苦味が強いもの、フルーティーなもの、黒くて濃厚なもの、軽やかでスッキリしたもの…それぞれに個性があり、味わいも飲むシーンも異なります。
この記事では、ビールの基本的な分類方法と、代表的なビールスタイルについて、発酵方法を軸に体系的に紹介していきます。
まずは、ビールの世界を理解する上での大きな枠組み——**「エール」と「ラガー」**という2大カテゴリから見ていきましょう。
2. ビールは2大分類:「エール」と「ラガー」
ビールの最も基本的な分類方法は、酵母の発酵方法に基づくものです。
これにより、ビールは大きく**「エール(上面発酵)」と「ラガー(下面発酵)」**の2つに分けられます。
2-1.エール(Ale)
- 発酵温度:高温(15〜25℃)
- 酵母が液面に浮かぶ=上面発酵
- 特徴:香り高く、コクがあり、個性豊か
エールは、長いビールの歴史の中でも古くから存在するスタイルです。高温で短期間に発酵させるため、フルーティーで華やかな香りが引き立ちます。
2-2.ラガー(Lager)
- 発酵温度:低温(7〜13℃)
- 酵母が底に沈む=下面発酵
- 特徴:クリアで爽快、クセが少ない
ラガーは比較的新しいタイプで、19世紀のドイツで確立されました。低温でゆっくり発酵させることで、透明感のある味わいが特徴です。日本やアメリカで主流のビールもこのラガータイプです。
3. 【エール系ビールの種類】
ここからは、エール系の代表的なスタイルを見ていきましょう。香りや風味の多様さが魅力です。
3-1. ペールエール(Pale Ale)
- 発祥:イギリス
- 特徴:モルトの甘さとホップの苦味のバランスが良い
- 色合い:明るい琥珀色
日本ではクラフトビールの入門として人気。定番中の定番で、飲みやすく個性も楽しめます。
3-2. IPA(インディア・ペールエール)
- 発祥:イギリス → 発展:アメリカ
- 特徴:強いホップの苦味と柑橘系の香り
- アルコール度数:やや高め(6〜8%)
IPAは元々イギリスからインドへの長旅に耐えるため、ホップを多く使って防腐効果を狙ったスタイル。今では「アメリカンIPA」が大人気。
3-3. ホワイトエール(ベルジャン・ホワイト)
- 発祥:ベルギー
- 原料:小麦+コリアンダーやオレンジピールなど
- 特徴:やさしい酸味とスパイス香、濁った見た目
飲み口が軽く、ビールが苦手な人にも好まれるスタイル。
3-4. ヴァイツェン(Weizen)
- 発祥:ドイツ
- 原料:小麦麦芽を50%以上使用
- 特徴:バナナやクローブのようなフルーティーな香り
酵母由来の香りが特徴で、見た目は濁っていて、口当たりはとてもなめらか。
3-5. スタウト/ポーター
- 発祥:イギリス(ポーター)→ アイルランド(スタウト)
- 特徴:ローストした麦芽の香ばしさ、コーヒーやチョコのような風味
- 色合い:黒~焦げ茶色
ギネスで有名なスタウトは、濃厚だけど飲みやすい。チョコレートと合わせるのもおすすめ。
3-6. セゾン(Saison)
- 発祥:ベルギーの農村地帯
- 特徴:スパイシーでドライ、爽やかでクセになる味
農作業の合間に飲むための季節限定ビールだった背景があり、今は通年で人気のスタイル。
4. 【ラガー系ビールの種類】
エールよりもすっきりとした飲み心地が特徴。日本の市販ビールの多くもこちらの系統です。
4-1. ピルスナー(Pilsner)
- 発祥:チェコ
- 特徴:ホップの苦味と軽快な飲み口
- 世界で最もポピュラーなビールスタイル
キレがあり、のど越し重視。日本の「スーパードライ」などもこの系統。
4-2. ヘレス(Helles)
- 発祥:ドイツ(ミュンヘン)
- 特徴:苦味が少なく、モルトの甘みが感じられる
ピルスナーよりもマイルド。ドイツ国内で非常に人気があります。
4-3. ボック(Bock)
- 発祥:ドイツ(アインベック)
- 特徴:アルコール度数が高く、コクのある味わい
- 飲む時期:冬~春の季節ビールとして
ダブルボックやアイスボックなど、派生スタイルもあり。
4-4. ダークラガー/シュヴァルツビア
- 発祥:ドイツ
- 特徴:黒ビールながらすっきりと飲みやすい
- 香ばしさと軽やかさのバランス
見た目は濃いけど、苦味やクセは控えめ。初心者にもおすすめ。
5. 【その他のスタイル・特殊分類】
上面/下面発酵だけではくくれないユニークなビールも多数存在します。
5-1. ハイブリッドスタイル(例:ケルシュ、カリフォルニアコモン)
- 上面発酵で仕込み、低温で熟成するスタイル
- エールとラガーの“いいとこ取り”
ケルシュはドイツ・ケルンの伝統ビール。軽やかでエレガント。
5-2. ランビック/ワイルドエール
- 発酵方法:自然発酵(野生酵母)
- 特徴:酸味が強く、独特な風味
代表例は「クリーク(チェリー)」や「グーズ」。上級者向けのビールとも。
5-3. フレーバードビール・フルーツビール
- 果物やスパイス、ハーブを加えたアレンジ系
- デザート感覚や女性人気も高いスタイル
ブルーベリーや柚子を使ったビールなど、日本でも増えてきています。
6. 最近注目のクラフトビールとその潮流
ここ10年ほどで世界中に広まった「クラフトビール」ムーブメント。小規模ブルワリーが個性的なスタイルを次々と生み出しています。
- 地元食材を使ったビール
- 伝統スタイルのリバイバル
- 極端なホップ量を使ったHazy IPAやDouble IPA
- タル熟成やサワービールなどの挑戦的な製品も多数
日本でも「よなよなエール」「水曜日のネコ」「志賀高原ビール」など、実力派のクラフトビールが人気を集めています。
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